波をつかまえて
先日ひとりの俳優さんが自ら命を絶ちました。まだ30歳の若さだったそうです。
映画にドラマにミュージカル、CM、番組MCまでこなして順風満帆に見えた人生。彼はその全てを捨ててしまえるほど辛かったのでしょうか。
うちのダンナさんは彼の初主演映画がお気に入りで、その後のドラマも度々チェックしていたのでショックを受けていました。私も彼がMCの番組が好きで観ていたので残念でなりません。
画面に映っていたあのはじけるような彼の笑顔が創られたものだとしたら悲しいです。
人気芸能人は誰も一度は実像と虚像のギャップに悩むのだとか。それでもたいがいの人が自ら自分をプロデュースしたり、全く違う人格を演じる事を楽しんだりしてうまくこなしているようですが、中には本来の自分を封印して虚像を演じる人もいるのだとか。芸能という膨大な人の目に晒される仕事に就く人間は周りの期待に応えるためにそこまでするのですね。壮絶な覚悟を感じます。
一般の人も例外ではありません。
「いい子」「いい人」「いい親」「いい夫婦」…
誰でも程度の差はあれどそういったものに縛られているのではないでしょうか。
他人の評価を気にするあまり自分を創りすぎると、うまく波に乗れず渦に巻き込まれて自分が今どんな体勢なのか分からなくなってしまいます。
「本来の自分」と「理想の自分」
理想を求めるのも大切ですが、かけ離れ過ぎると心のバランスが崩れてしまいます。
次々とやってくる大きな波を待ち構えて上手く乗りこなすことができるブレない心の強さが生きていく上でも大切なのかもしれません。
彼が何故死んでしまったのか誰もわかりません。
彼は今何を思うのでしょうか。苦しみは消えたのでしょうか。
いいえ。きっと後悔しているはずです。
彼にしか解決できなかった、彼だからこそ解決できた問題から逃げてしまったのですから。
そして共演者や友人たち、彼を愛したすべての人たちの嘆きを見ると彼はやはり死を選ぶべきではなかったのだと思います。
それではまた。ありがとうございました。